公務員からエンジニアへの転職は、文系・未経験からでも十分に実現できます。一方で、「安定を手放して後悔しないか」「本当に自分に向いているのか」と迷って、一歩目を踏み出せない人も少なくありません。
この記事では、公務員からエンジニアへ転職するメリットとデメリット、後悔しやすいパターンとその防ぎ方、向いている人と向いていない人の特徴を整理します。転職するかどうかを決めるための判断材料として使ってください。
この記事の結論
- 公務員からエンジニアへの転職は珍しくない。市役所・県庁・国家公務員・教員など、さまざまな職場から文系・未経験でエンジニアになる人がいる
- メリットは「専門性が積み上がる」「働き方を選びやすい」「成果が評価に反映されやすい」こと。公務員の調整力や業務知識もそのまま活きる
- デメリットは「最初の年収が下がることがある」「学び続ける必要がある」「雇用保険がなく、辞めてから探すと不利」なこと
- 後悔する人の多くは、準備不足のまま辞める、求人の中身を確かめずに入社する、のどちらか。在職中に学習と転職活動を進めれば防げる
公務員からエンジニアへの転職は可能?
可能です。市役所や県庁、国の機関、学校など、さまざまな職場の公務員が、文系・未経験からエンジニアに転職しています。未経験の職種への転職は20代から30代前半のほうが選択肢が広い傾向がありますが、30代後半で転職する人もいます。
IT人材の需要も続いています。経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」では、2030年にIT人材が約16万人から最大約79万人不足する可能性があると試算されています(需要の伸び方などによって幅があります)。未経験者を育てて採用する企業があるのは、こうした背景があるためです。
なお、この記事でいう「エンジニア」は、システムの開発や運用を担うITエンジニアを指します。土木や電気などの技術職の公務員がITエンジニアに転職するケースもあります。業務の効率化のためにExcelのマクロなどで作業を自動化した経験が、IT分野に興味を持つきっかけになることもよくあります。
公務員からエンジニアに転職するメリット
1. 専門性が積み上がる
公務員は数年ごとの異動で業務が変わり、「自分の強みは何か」と聞かれて答えにくいと感じる人が多くいます。エンジニアは、一つの技術や分野を深めていくほど評価が上がる仕事です。「異動のたびに積み上げたものがリセットされる」と感じていた人にとっては、大きな変化になります。
2. 働く場所や時間を選びやすい
IT企業には、リモートワークやフレックスタイムを取り入れている会社が多くあります。転勤のない働き方を求めるなど、勤務地の制約から離れることを目的に転職する人もいます。
3. 成果やスキルが評価に反映されやすい
公務員の給与は、年齢や勤続年数で決まる部分が大きい仕組みです。エンジニアは、身につけた技術や担当できる範囲が広がるほど、昇給や転職で評価されやすくなります。経験を積んだ後に、より条件の良い会社へ転職して年収を上げる人もいます。
4. 公務員の経験がそのまま活きる
エンジニアの仕事は、プログラムを書くことだけではありません。利用者の要望を聞き取る、関係者と調整する、仕様書や手順書を書くといった仕事は、公務員として日常的にしてきたことと重なります。官公庁や自治体のシステムを手がける会社では、行政の業務知識が直接の強みになります(公共系SEとは?)。
5. キャリアの選択肢が広がる
エンジニアとして経験を積むと、より大きな会社への転職、プロジェクトマネージャー、フリーランス、副業など、選べる道が増えます。副業を認めている会社であれば、本業で身につけた技術を使って小さな開発案件を受けるといった働き方もできます。
公務員からエンジニアに転職するデメリット・注意点
1. 最初の年収が下がることがある
未経験で採用される場合、最初の年収は前職と同じくらいか、下がることがあります。年収は経験を積んでから上がっていくことが多いため、転職直後の1〜2年の生活費を見込んでおくことが大切です。
2. 入社後も学び続ける必要がある
技術は変化が速く、入社後も新しい知識を学び続けることが前提の仕事です。「一度覚えれば定年まで同じやり方で働ける」という働き方を望む人には、負担に感じられるかもしれません。
3. 雇用保険がなく、辞めてから探すと不利
国や自治体の職員の多くは雇用保険の適用外のため、退職しても失業給付は原則として受けられません(雇用保険法第6条第6号)。自己都合で退職すると、退職手当も定年退職より少なくなります。退職してから学習や転職活動を始めると、収入のない期間が長くなりやすいため注意が必要です。退職時のお金の確認ポイントは公務員から民間企業へ転職する流れで整理しています。
4. 会社によって働き方の差が大きい
IT企業は、自社でサービスを作る会社、システム開発を受託する会社(SIer)、エンジニアを顧客先に派遣する会社(SES)など、業態によって働き方や育成の仕組みが大きく異なります。「未経験歓迎」の求人でも、入社後の研修や配属先の決まり方は会社ごとに違うため、応募前に確かめることが欠かせません。業態の違いはIT企業の業態3種類で解説しています。
5. 「安定」の意味が変わる
公務員の安定は「組織に守られる安定」です。エンジニアの安定は「どこでも通用するスキルを持つことによる安定」で、自分で積み上げていく必要があります。この違いに納得できるかどうかが、転職後の満足度を左右します。
公務員とエンジニアの働き方の違い
| 項目 | 公務員 | エンジニア(IT企業) |
|---|---|---|
| 仕事内容の変化 | 数年ごとの異動で大きく変わる | 一つの技術・分野を深めていくことが多い |
| 評価・給与 | 年齢や勤続年数で決まる部分が大きい | スキルや担当範囲によって差がつきやすい |
| 勤務地 | 転勤や異動で変わることがある | リモートワークを選べる会社も多い |
| 副業 | 法律で制限されている | 会社の規程による(認める会社もある) |
| 身分の保障 | 法律で強く守られている | 会社の業績や自分のスキルに左右される |
| 学習 | 異動のたびに新しい業務を覚える | 技術の変化に合わせて学び続ける |
どちらが良い・悪いではなく、自分が何を大切にしたいかで向き不向きが変わります。
公務員からエンジニアへの転職で後悔しやすいパターン
後悔の声として多いのは、転職したこと自体よりも、進め方に関するものです。代表的なパターンと防ぎ方をまとめます。
| 後悔しやすいパターン | 防ぎ方 |
|---|---|
| 勢いで退職してから学習を始め、収入がない期間が長引いた | 在職中に学習と転職活動を進め、内定が出てから退職する |
| 「未経験歓迎」だけで決め、研修や配属先が想像と違った | 研修の内容、最初の配属先、仕事内容を面接で具体的に確認する |
| 年収が一時的に下がることを想定していなかった | 転職直後の年収を確認し、1〜2年分の生活費を試算しておく |
| 最初から職種を絞り込みすぎて、応募できる求人が少なくなった | 未経験のうちは職種を決め打ちせず、育成の体制や入社後に積める経験で会社を選ぶ |
| 一人で悩み続けて、判断の材料が足りなかった | 公務員からの転職事情に詳しい人に相談し、事例を集めてから決める |
学習を始めてから内定までは、働きながら数か月から半年ほどかけて進める人が多く見られます。焦って退職するより、在職中に計画を立てて進めるほうが、結果的に後悔の少ない転職につながります。
公務員からエンジニアに向いている人・向いていない人
向いている人
- 異動のたびにリセットされず、一つの分野で専門性を積み上げたい人
- 業務の非効率に気づくと、仕組みで解決したくなる人
- わからないことを調べて、自分で解決するのが苦にならない人
- リモートワークや転勤のない働き方など、働く場所や時間を自分で選びたい人
- 成果やスキルが評価に反映される環境で働きたい人
向いていない可能性がある人
- 入社後に新しいことを学び続けるのが強い負担に感じる人
- 収入が一時的に下がることをどうしても受け入れられない人
- 決められた手順を繰り返す仕事に、最も安心感を覚える人
向いていない可能性がある項目に当てはまっても、すぐに諦める必要はありません。エンジニアの中にも、手順に沿った運用や保守が中心の仕事があります。入社後にいくつかの仕事を経験する中で、自分に合う働き方が見つかることも多くあります。
転職を決める前に確認したい5つのこと
- なぜ公務員を辞めたいのか、エンジニアになって何を実現したいのかを言葉にできるか
- 働きながら、週に10時間前後の学習時間を数か月確保できるか
- 転職直後に年収が下がった場合でも、生活が成り立つか
- 職種にこだわらず、まずはITエンジニアとしての経験を積むことを優先できるか
- 内定が出るまで退職しない計画になっているか
5つとも「はい」と答えられるなら、具体的な準備に進む段階です。進め方は公務員からITエンジニアに転職する方法で5つのステップに分けて解説しています。
よくある質問
Q. 公務員からエンジニアへの転職は何歳までできますか?
一律の上限はありません。未経験からの転職は20代から30代前半が中心ですが、30代後半で転職する人もいます。年齢が上がるほど、学習の実績に加えて、公務員としての経験をどう活かせるかを具体的に伝えることが大切になります。
Q. 文系でもエンジニアになれますか?
なれます。公務員からエンジニアに転職する人の多くは文系出身です。必要なのは理系の知識より、学び続ける習慣と、わからないことを調べて解決する力です。
Q. 公務員を辞めてエンジニアになったことを後悔する人はいますか?
いないとは言えません。ただし、後悔の多くは「準備不足のまま辞めた」「求人の中身を確かめなかった」といった進め方によるものです。在職中に学習と転職活動を進め、条件を確かめてから退職すれば、多くは防げます。
Q. 公務員のままエンジニアのような仕事をする方法はありますか?
自治体や官公庁にも、情報システム部門やデジタル担当の部署があります。ただし、主な仕事はシステムの企画や調達、ベンダーとの調整で、自分でプログラムを書く場面は多くありません。異動で配属が変わる可能性もあります。開発そのものを仕事にしたい場合は、民間企業への転職が近道です。
まとめ
公務員からエンジニアへの転職には、専門性が積み上がる、働き方を選びやすい、成果が評価されやすいといったメリットがあります。一方で、最初の年収が下がることがある、学び続ける必要がある、雇用保険がないといった注意点もあります。後悔する人の多くは進め方でつまずいているため、在職中に準備を進め、求人の中身を確かめてから退職すれば、リスクは小さくできます。
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参考資料
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月公表)
- 雇用保険法 第6条(e-Gov法令検索)

