公務員から民間企業への転職は、在職中に準備を始め、内定が出てから退職を申し出る順番で進めるのが基本です。民間企業の会社員と違い、公務員には雇用保険が原則として適用されないため、退職してから仕事を探すと収入が途切れやすくなります。
この記事では、公務員が転職を考え始めてから入社するまでの流れを7つのステップに分け、期間の目安、在職中に気をつけたいルール、退職時のお金や保険の切り替えまでを順番に整理します。
この記事の結論
- 公務員の転職は「在職中に準備して内定後に退職」が基本。雇用保険が適用されないため、先に辞めると収入の空白が生まれやすい
- 準備から入社までは半年前後を見込むと動きやすい。異動や繁忙期、賞与の支給日も踏まえて逆算する
- 在職中は守秘義務や副業規制のルールを守る。国家公務員は利害関係のある企業への求職が規制されている
- 退職時は退職手当、健康保険、年金の切り替えを確認する。手続きは人事担当・共済組合で確かめる
公務員の転職はいつから準備すればいい?
転職したい時期から逆算して、6か月ほど前から準備を始めると無理なく進められます。自己分析と情報収集に1〜2か月、応募と選考に2〜3か月、内定から退職までに1〜2か月かかるのが一つの目安です。
公務員の場合は、年度末の3月末で退職して4月に入社する流れを選ぶ人が多く見られます。年度の区切りは引き継ぎがしやすく、職場にも説明しやすいためです。ただし、民間企業の中途採用は通年で行われているため、年度末にこだわらず、自分の準備が整った時期に動くこともできます。
辞める時期そのものに迷っている場合は、公務員を辞めるベストなタイミングとは?年代別に考える転職の分かれ道も参考にしてください。
公務員から民間企業へ転職する7つのステップ
全体の流れを表にまとめます。
| ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 転職の理由と条件を書き出す | 2〜4週間 |
| 2 | 職種と業界の情報を集める | 2〜4週間 |
| 3 | 必要なスキルの準備を始める | 1〜3か月(職種による) |
| 4 | 応募書類を作る | 2〜3週間 |
| 5 | 応募・面接を受ける | 1〜3か月 |
| 6 | 内定後に条件を確認し、退職を申し出る | 1〜2か月 |
| 7 | 退職手続きをして入社する | 退職日前後 |
ステップ1 転職の理由と条件を書き出す
最初に「なぜ辞めたいのか」と「次の仕事で何を手に入れたいのか」を分けて書き出します。たとえば「異動のたびに一から覚え直すのがつらい」という理由なら、次の仕事の条件は「一つの分野で専門性を積み上げられること」になります。
理由だけで動くと、面接で前向きな志望動機を話しにくくなります。条件まで言葉にしておくと、応募先を選ぶ基準にもなり、ステップ4・5がぐっと楽になります。公務員が転職を考える代表的な理由は公務員の転職理由TOP3でまとめています。
ステップ2 職種と業界の情報を集める
公務員の仕事は民間企業の職種名と一対一で対応しないため、「自分の経験はどの職種に近いのか」を調べる段階が必要です。窓口業務なら顧客対応、予算や契約の担当なら事務・管理部門、制度の運用ならシステムや業務改善の仕事と、経験を分解して近い職種を探します。
あわせて、その職種が未経験から採用されているか、年収はどの程度か、働き方(勤務地・リモートワーク・転勤の有無)はどうかを確認します。
ステップ3 必要なスキルの準備を始める
職種によっては、応募前に学習や資格の準備が必要です。経理なら簿記、ITエンジニアならプログラミングやネットワークの基礎といった具合に、未経験でも「学んでいる事実」を示せると選考で有利になります。
どの資格が転職で評価されやすいかは公務員が転職するなら取得したいおすすめ資格10選で紹介しています。
ステップ4 応募書類を作る
民間企業の選考では、履歴書に加えて職務経歴書を求められるのが一般的です。公務員の職務経歴書は「担当した業務の羅列」になりがちなので、業務ごとに「何を・どの規模で・どう工夫して・どうなったか」を書くと伝わりやすくなります。
たとえば「住民票の窓口業務」とだけ書くより、「1日あたりの対応件数」と「待ち時間を減らすために受付手順を見直した」といった工夫まで書くほうが、企業はあなたの働き方を具体的に想像できます。件数などの数字は、覚えている範囲の実数で書きましょう。
ステップ5 応募・面接を受ける
面接では「なぜ安定した公務員を辞めるのか」という質問をほぼ確実に聞かれると考えて準備しておきます。答えるときは職場への不満ではなく、ステップ1で整理した「次の仕事で実現したいこと」を中心に話すと、前向きな印象になります。
応募は1社ずつではなく、複数社を並行して進めるのが一般的です。在職中は面接の日程調整が難しいため、オンライン面接や夕方以降の面接に対応している企業を選ぶと進めやすくなります。
ステップ6 内定後に条件を確認し、退職を申し出る
内定が出たら、年収、勤務地、勤務時間、入社日などの条件を書面(労働条件通知書など)で確認します。条件に納得してから、上司に退職の意思を伝えます。
退職を申し出る時期の決まりは組織によって異なるため、所属の規程を確認しましょう。引き継ぎや後任の手配を考えると、1〜2か月前には伝えておくと円滑です。
ステップ7 退職手続きをして入社する
退職日が決まったら、退職願の提出、貸与物の返却、引き継ぎ書の作成を進めます。あわせて、次の章で説明するお金と保険の切り替えも確認しておきます。
在職中の転職活動で気をつけたいルール
公務員が在職中に転職活動をすること自体は禁止されていません。ただし、公務員ならではのルールがあるため、次の3点は事前に確認しておきましょう。
守秘義務
在職中に知った情報は、退職後も漏らしてはいけないとされています。職務経歴書や面接で実績を説明するときは、個人情報や非公開の情報に触れず、業務の種類や規模、自分の工夫を中心に話します。
副業・兼業の制限
地方公務員は、任命権者の許可なく営利企業の役員を兼ねたり、報酬を得て事業に従事したりすることが制限されています(地方公務員法第38条)。転職の準備として、許可を得ずに報酬を受け取る仕事を始めるのは避けましょう。学習や資格の取得は問題ありません。
国家公務員の求職の規制
国家公務員は、職務と利害関係のある企業(利害関係企業等)に対して、退職後の就職を目的に自分の情報を提供したり、就職を約束したりすることが原則として禁止されています(国家公務員法第106条の3)。契約や許認可、検査などで関わった企業へ応募する場合は、事前に所属の人事担当に確認してください。地方公務員の場合も、自治体ごとに条例などで定めがあることがあります。
退職時に確認したいお金と保険の切り替え
公務員の退職では、会社員の転職とは違う点がいくつかあります。代表的なものを表にまとめます。
| 項目 | 公務員の場合の主なポイント | 確認先 |
|---|---|---|
| 失業給付(雇用保険) | 国や自治体の職員の多くは雇用保険の適用外。退職後に失業給付は受けられないのが原則 | 人事担当 |
| 退職手当 | 勤続年数と退職理由で支給額が変わる。自己都合退職は定年退職より支給率が低い | 人事担当 |
| 健康保険 | 共済組合の組合員から、転職先の健康保険へ切り替え。退職日と入社日の間に空白があれば、任意継続か国民健康保険を選ぶ | 共済組合・市区町村 |
| 年金 | 2015年10月から公務員も厚生年金に加入しているため、転職先でも厚生年金が続く | 共済組合・年金事務所 |
| 住民税 | 退職月によって、最後の給与からまとめて差し引かれるか、自分で納めるかが変わる | 人事担当・市区町村 |
雇用保険の適用除外は、雇用保険法第6条第6号に定められています。国や自治体に雇われている人のうち、退職したときに受け取る給与(退職手当など)が雇用保険の給付を上回る人は対象外とされています。このため、公務員は「辞めてからゆっくり探す」より「働きながら決める」ほうが安全です。
公務員から民間企業へ転職した人の傾向
TechVillageが掲載している公務員からITエンジニアへの転職事例(vol.01〜43の43人)を集計すると、前職は市役所・区役所が19人、県庁・県職員が9人、国家公務員が7人、教員が6人、消防・警察が2人でした。年齢は25〜29歳が20人、30〜34歳が15人、35〜39歳が6人で、30代で転職した人も半数近くいます。
多くの人が「在職中に学習を始め、内定を得てから退職する」流れで転職しています。具体的な体験談は公務員からの転職事例で読めます。
よくある質問
Q. 公務員の転職は何歳までなら可能ですか?
年齢の上限は職種や企業によって異なり、一律には決まっていません。未経験の職種に挑戦する場合は20代から30代前半のほうが選択肢は広い傾向がありますが、年齢よりも準備の内容と転職理由の伝え方が問われます。
Q. 公務員の経験は民間企業で評価されますか?
評価されます。ただし、そのまま伝えるのではなく、民間企業の言葉に置き換えることが大切です。調整力、文書作成力、法令や規程に沿って正確に処理する力、住民対応の経験などは、多くの職種で求められる力です。
Q. 転職活動をしていることは職場に知られますか?
自分から話さない限り、応募先の企業が勤務先に連絡することは通常ありません。ただし、面接のための休暇の取り方や、職場での会話から知られることはあります。内定が出て退職を申し出るまでは、職場では話さないほうが無難です。
Q. 退職してから転職活動をしてもいいですか?
できますが、公務員は原則として失業給付を受けられないため、収入が無い期間の生活費を自分で用意する必要があります。心身の不調などで働きながらの活動が難しい場合は、先に休職制度を使えないか確認しましょう。制度は公務員の休職制度とは?病気休暇と休職の期間・給与・傷病手当金で整理しています。
まとめ
公務員から民間企業への転職は、理由と条件の整理、情報収集、スキルの準備、応募書類、面接、退職の申し出、退職手続きの7ステップで進みます。雇用保険が原則適用されないことや、在職中の求職のルールなど、公務員ならではの注意点を押さえておけば、働きながら安全に転職先を決められます。
ITエンジニアへの転職を考えている方は、公務員からITエンジニアに転職する方法もあわせて読んでみてください。
TechVillageでは、公務員からの転職に特化した無料カウンセリングを行っています。転職するかどうか迷っている段階の方も、まずは今の状況を話すところから始めてみてください。
参考資料
- 雇用保険法 第6条(e-Gov法令検索)
- 国家公務員法 第106条の3(e-Gov法令検索)
- 地方公務員法 第38条(e-Gov法令検索)

